こんにちは、たなかあきらです。
締め切りは嫌いですか?
「当然でしょ。締め切りが好きな人なんていないはず」
締め切りを少しでも嫌じゃなくするには?
「そりゃ、締め切り直前になって慌てないように、前もってやっておくことですよ。当然でしょ」
当然?
「えっ、ええ。でもなかなか出来ないんですよね。全く」
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大バカ者の僕
その時、時計は既に20時20分を回っていた。
「いかん、やばい、時間がない」
僕には、原稿の締め切りまで、もう1時間40分しかなかった。
僕は、疲れた体に鞭を打ち、足早に駅から家までの帰路を急いだ。
僕は、後悔した。
原稿の締め切りが迫っていることは、十分に承知していたが、
今日の夜、頑張れば締め切りに間に合うだろう、という軽い気持ちでいた。
しかし、夜のスケジュールが既に埋まっていることを忘れていたのだ。
その晩は、夜の7時から落語を見に行かねばならないことをすっかり忘れていたのである。落語を見に行くことは同時に、締め切りに間に合わなくなることを、ほぼ意味していた。
「なんでこんな時に、落語なのか」
通常の人なら落語に行くのは断って、必死になって原稿を書こうとするだろう。僕はバカである。大バカ者である。
「僕は大人です。どちらを選んでも、大人なので責任はとれます。家に帰ってから頑張れば、何とかなるだろう。」
と、という妙な、大人意識を前面に打ち出して、落語を見る口実を作ってしまったのだ。
しかし、落語が終わって帰り道、僕は後悔していた。なぜ、軽々しく責任を取るって考えてしまったのだろう。
落語はとても楽しかった。原稿の締め切りのことをすっかり忘れて、楽しんでしまった。落語部は面白かっただけに、余韻も長引いた。落語の内容が頭から離れない。原稿の締め切りが、もう目の前に迫っているのに、文章内容を書くことについて何も考えることが出来なかった。
※原稿とはライティングの宿題なのです。
締め切りとのマッチレース
今回も締め切りに間に合わず提出できず、か。これで、今週も「締め切り」というプレッシャーと焦りからも、提出しないことで解放されるか。仕方ない、これも自己責任だ。そう、思い始めた。
ふと、僕の脳裏に焼き付いていた言葉を思い出した。
「やらなければ何も起こらない、やれば何かが起きる可能性がある」
やれば何かが起きる可能性がある、かどうかは分からないが、やらなければ何もないことは明らかだ。僕はこの言葉を信じている部分がある。
なのに何をやっているのだ!
実は、毎週のように迫ってくる投稿の締め切りを僕は2度もすっ飛ばしていたのだ。
投稿をさぼっているばかりでは、何も起こり得ようがないのだ。
今回は、投稿をさぼる訳にはいかない! そう僕は思いなおした。
しかし残された時間はわずかしかなかった。
大急ぎで、家に駆け込んだ。僕は早速パソコンの前に向きあった。
さあ書こう! と意気込んだ。しかし、パソコンのキーをたたいて、文字を入力することが出来ない。書く内容が思い浮かばず、先に進めない。書こう書こうと思うほど、頭がボーっとしてくる。
締め切りは24時だ。もう時計は、23時10分を指していた。
僕は深呼吸をした。自分を落ち着かせようとした。
自分はできる、いや、自分じゃない人間になってみよう。
くよくよ悩んでいる、たなかあきらから変身して、別の人間になった気で頑張ろう。
食べ物を一気に押し込み、瞬間的に吸収して、栄養を脳に全力で送り込んだ。
「やるぞ!」
僕はまるで普段の自分という生き物とは違った物体になっていた。おそらく。僕はかじりつくようにパソコンの画面に向かい、必死にキーをたたいた。
そうするとようやく、言葉がぽつんぽつんと浮かんできた。
パソコンのキーを打つスピードが上がってきた。
夜ではあったが、日中は窓を閉め太陽に照らされ続けた部屋は、とてもむしむしと暑かった。必死でキーをたたいていると、汗がしたたり落ちる。
でも、そんなことを気にする余裕はなかった。
ぼくは、トンネルの向こうのゴールに向かって、明るい光を目指して、キーをたたき続けた。
「もうちょっとで、締め切りの時刻だ」
もう時間は残り時間は1分を切っていた。
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とうとう、締め切り時間には間に合わなかった。書けた稚拙な文章はここまでだ。もう一息であった。15分くらいあったら、殴り書きでも最後まで書けたかもしれない。
大バカ者の僕であった。猛反省すべきである。
無理な状況を自ら作り出し、自ら窮地に追い込んだけれど、その窮地から抜け出そうと全身全霊の力を出して、頑張った。
でも、大バカ者の僕は、締め切りに間に合わなかった。
「やらなければ何も起こらない、やれば何かが起きる可能性がある」
だけど、この言葉を思い出して必死になることが出来た、今日に満足だ。
得られるものがあった。もっとちゃんとやれば、何とかなるかもしれない。
刻々と迫りくる締め切り時間との、マッチレース。
敗れたが、僕は少し希望を感じていた。
最後まで読んでくださり有難うございました。