「おじさん、こんにちは」
「こんにちは。坊やはお散歩かい」
「うん、パパと一緒にジョンの散歩なんだよ。日曜日はいつも、お昼に来てるよ」
「へえ。とっても坊やはえらいね。ジョンも立派な犬だねえ」
暖かい休日の昼下がり、おじさんは公園に出かける。気持ち良く吹いてくる風を感じながら、川沿いをゆっくりと歩き、人々の楽しそうな様子や動物達のすがたを眺めるのが、好きだ。
趣味という程でもないが、風景を写真におさめることもある。とても想像が広がる。
「おじさん、いいお写真撮れた?」
「坊や、見てみる?」
「うわぁ、凄い。みてみて、鳥の群れが川から飛び立ってるよ。僕、初めてみたよ。凄いなあ」
「そうかい、気に入ってくれたか。坊やありがとう」
「僕もおじさんみたいに、写真が撮れたらなあ」
リンリン。
「あら、ごめんなさい」
「すご〜い。あのお姉ちゃん、速いな、かっこいいなあ。僕もあんなスピードで自転車に乗りたいなあ」
「そう言えば、坊や。可愛い赤ちゃんを連れた夫婦を見なかったかい」
「見たよ。あっちの方で見たよ。何か、おじさんが、高い高いをしてたよ」
「ありがとう坊や。おじさんは、今からその赤ちゃんと夫婦に会うんだよ。そして、写真を撮るんだ」
「ふーん。そうなんだ。じゃ、バイバイ。おじさん、頑張ってね」
「じゃ、坊や、ありがとね。また、来週会えるかも知れないね」
そんな会話を聞きながら、ベンチにゴロリと横になった。そして、コーヒーを片手にゆっくりと読書を楽しむのだ。とても想像が広がる。
風がそよそよと吹いて、私の髪をユラユラと揺らす。木々の葉がカサカサと音を立てる。こんなに天気の良い日は、家の中で静かに本を読むより、目一杯外の空気にふれて自然の一員になり、開放的な気分で過ごした方が、私の性に合っているのだ。私にとって、至高の休日の過ごし方だ。
僕は、ゆったりとコーヒーに手を伸ばした。そして、再びノートの画面に向かい、記事をアイディアを考えはじめた。
僕は、静かな部屋に閉じこもっているよりも、このカフェに来て、パソコンで記事を書くのが好きだ。何しろ、想像が広がるからだ。
僕は情景を思い浮かべながら、ゆったりとコーヒーカップに手を伸ばした。
カフェの中をぐるりと見渡すと、多くの人もコーヒーなどを飲みながら、勉強したり読書したりしている。推理小説だろうか、犯人は予想できたのかな。資格のテスト勉強だろうか、来週が本番で最後の追い込みだろうか。
じっと見たり聞いたりするわけでは無いが、若い女性たちや、カップル達も楽しそうに会話をしている。今度行く、レストランを選んだり、クリスマスの過ごし方の、予定を立てているのかも知れないな。楽しそうだ。
そんな人々がくつろいでいるカフェの壁一面に、見事な絵が描かれているのである。僕はその絵を眺めるのが好きだ。コーヒーを飲みながら、描かれている人々を観察していると、まるで絵の中に入ってしまったかのように情景が浮かんでくる。
「あら、こんにちは。お久しぶりです」
「おお、かわいいねえ。大きくなったねえ」
「写真を撮る前に、おじさんにも、だっこさせてもらってもいいかな」
「ええ、どうぞ。どうぞ」
「うっ、うっ、えっ、えぐっ、ぎゃ~」
僕はこのカフェがとても好きである。僕は、このカフェに来るたびに絵と向き合い、毎回違った想像の広がりを楽しんでいるのである。家に閉じこもってパソコンに向き合っているより、このカフェに来てコーヒーを飲みながら過ごす時間が、僕にとっては至高のひと時なのである。
最後まで読んでくださり有難うございました。