こんにちは、たなかあきらです。
つい、癒しが欲しくなる時がある。
仕事で疲れた時のお酒、肩こりの時のマッサージ、精神的に参ったときはスーパー銭湯、音楽を聴くのも良い。つい癒され過ぎ、ハマってしまう事もあった。
ブログ中毒で疲れ切った心身
アキラは心からの癒しを求め、街に出た。マッサージ、音楽、温泉、お酒、どれも良いけど、それだけで癒しは得られるだろうか。
楽しそうに話し声が聞こえる飲み屋のそばを、ぽつんと通り過ぎ去っていった。彼には本当の癒しが必要であった。
サラリーマンのアキラには、夢があり、目標があった。それを目指して、コツコツと歴史に関するブログ記事を書き続けていた。ここ1、2年は仕事以外の殆どの時間は、ブログを書く事に費やされていた。
夢や目標に向かって進んでいくことは楽しい。寝る間を惜しんで、それ以外の事をやめてまでも、アキラはブログを書き続けることができた。つい、数ヶ月前までのことだ。
夢に向かって進んでいたが、中毒になり暗い闇に入っている事にアキラは、なかなか気がついてはいなかった。
アキラは壁にぶち当たった。記事をどんどん書いて、アクセス数が順調にアップしている時はまだ良かった。しかし、世の中には同じ様な競争相手は数え切れないほどいるし、アキラの文章スキルが秀でていたわけでもなかった。アクセス数が増えなくなり、書くネタにも苦心する様になり、アキラは苦しみ始めた。
壁にぶち当たると共に、アキラは病み始めてしまったのだ。
会社の仕事も、ブログを書くのも常に座ってパソコンに向かっている。更に毎日夜遅くまで、ブログを書き続けていては、体に支障を及ぼさない訳がなかった。
ひどい寝不足で疲れやすく、精神的にも不安定になった。慢性の首こり、肩こり、背中こりで、体が自由に動かなくなってしまった。文章がうまく書けない、モチベーションが上がらない、体もボロボロだ。アキラの悩みは深くなるものの、相談できる友達もいなくなっていた。
ああ、こんな生活はいつまで続けられるだろうか?
続けていたら、間違いなく病気になるだろう。寿命も縮めてしまうだろう。何とかせねば。
彼は気がつかないうちに、中毒になっていたのだ。
毎日毎日ブログを書いてアップをしていると、たとえボロボロの状態でもブログを書かずにはいられなくなるのだ。それはまるで、ランニングにハマってしまった時の様だった。
アキラは毎日ランニングをしていた頃があった。毎日毎日、7キロくらい走って、良いタイムが出せる様に練習していた。それを続けていると、今日は走るのをやめようかなと思っても、何か体が物足りなく感じ、走ってしまうのだ。1日でも練習しないと、タイムが落ちるんじゃないか、太ってしまうんじゃないか、と恐れ、走らないと安心感が得られなくなるのだ。ランニング中毒だ。
ブログの場合も同じで、1日でもブログを書かずにアップしない日があると、アクセス数が減るんじゃないか、と不安になるのだ。アキラはブログを書かないと安心感が得られない、ブログ中毒になっていた。
ブログ中毒になり、ブログから離れなれない生活が続き、アキラは心身ともに疲弊していた。
あきらかに、アキラには癒しが必要であった。ブログ中毒から抜け出す事が、必要であった。
酒の力だけでいいのか?
手っ取り早い方法に、お酒の力を借りる手がある。
アキラは毎日会社からの帰り道で、缶ビールを買って、一人飲みする事が多くなってきた。初めは気分転換になったものの、ひどい孤独感を感じる様になった。
いいなあ、うらやましいなあ。
彼は賑やかな話し声が聞こえる飲み屋のそばを、通り過ぎた。皆んな何と楽しそうなんだろう。仲間や友達などと、グループでワイワイ話しながら、お酒を楽しんでいる。
何で僕は一人、さみしく缶ビールを飲んでいるんだろう。
アキラは気がついた。彼の周りに、友人と言える人が、誰もいない事に気がついた。
ブログ中毒になって、仕事以外のプライベートはブログを書く事しか頭に無かった。
友達は1人減り、2人減り、気がついた時には、リアルな友達は誰もいなくなっていた。わずかにネット上で相互フォローした人々と一言二言コメントするくらいになっていた。
大きな孤独感と寂しさがアキラを襲った。アキラは自分を変えて、ブログ中毒の生活から抜け出し、癒される必要があった。
コンビニで買ったアルコールを1人、部屋で飲む機会が増えた。アキラは孤独感に襲われながら、それでもブログを書き続けた。ブログを書けば書くほど、1人で缶ビールを飲めば飲むほど、孤独感は強くなった。孤独感が強まると、ブログを書く事も辛くなってきた。アキラは負のスパイラルに陥った。
自分を変えたい、変えるためには・・・
今の自分を変えたい。ブログを書くのはいいけど、心を解放して明るく生きたい。友達と楽しく愉快に語り合い、面白おかしく暮したい、そう強く思う様になった。どうしようか?
この数年間の自分から、どうやって変えようか?
ふと、ある言葉を思い出した。数年前に友達から聞いた言葉である。自分を変えたいとき、スランプから抜け出したいとき、今の自分では決してやらないだろう事をやってみると良い。
なるほど、人間は普段やっていることを続け、普段の環境に居座ろうと言う習性がある。その中でもがくより、いっそ別の世界に踏み込んでみた方が良いかもしれない。
アキラは思い切って、普段の世界から出ようと努めた。
普段やらなかった事をやってみた。ボランティアをやってみた。読書会に出てみた。水泳を始めてみた。人がたくさんいる場所に出かけ、話しをする機会が増えた。気が合い、語り合える友達を作る事は容易ではない。友達は、知り合いですら簡単にできるものではない、とアキラは思った。
しかし、人と触れ合う機会が増え、少しアキラは心が和み始め、そうすると周りが動き始めた様だった。
これは引き寄せとも言えるのかも知れない。
ある日、アキラはよく通る飲み屋街を歩いていた。いつもながら、多くの人が友人や家族と面白おかしく、お酒や食事を楽しんでいた。いつもの様に、アキラは1人寂しくその傍を、通り過ぎた。
その時、ある看板に目が止まった。普段から目にしているが、決して足を止めなかった店だ。
アキラは、友人の言葉を思い出した。やらない事をやってみよう。
アキラは階段を3階までゆっくりと上がり、思い切って店のドアを開けた。
そこはアキラの知らない異空間であった。パブには多くの人々がいた。日本人も外国人もたくさんいた。和やかな雰囲気だった。店員も大勢のお客さんも、始めてくるアキラに対してもフレンドリーだった。ビールを片手に、隣に座った人が乾杯を求めてきて、すぐにうち溶け合った。1人ではない、多くのお客さんがそうであった。
ここは、みんな友達になるんだよ。初対面でも関係なくフレンドリーになるんだ。こんな雰囲気のパブなかなかないだろう。一度来ると、常連になっちゃうんだ。
アキラは多くの人と一緒に酔っ払い、一緒にバンド演奏に合わせて踊り、笑いながら多くを話した。
こんな楽しい時間を過ごしたのは、あっただろうか。
アキラの心は溶け始め、柔らかくなった。アキラの心と体は、嬉しさとワクワク感に入れ替わり、幸せな疲労を感じた。
このパブはアキラにとって癒しの場所になるかも知れない。壁にぶち当たったブログも、書ける様になるかも知れない。楽しく日々が暮らせるかも知れない。
アキラは次の日も、軽やかにパブのドアを開けた。
最後まで読んでくださり有難うございました。